トレーディングカードゲーム（TCG）では、新しいパックが発売されるたびに、それまでの戦い方や流行（いわゆる「環境」）が大きく変化することがあります。それは、新しいカードが持つ効果や能力が、既存のカードとの組み合わせ（「シナジー」と呼びます）によって予想もしないような強力な動きを生み出したり、特定の戦略に対する新たな対策（「メタ」と呼びます）になったりするからです。

「ワンピースカードゲーム」でも、ブースターパック「師弟の絆【OP-12】」の登場で、きっとたくさんの新しい戦略や面白い組み合わせが生まれるはずです。ここでは、これからデッキを作ったり、対戦で勝ちたいと思ったりしている初心者さんから中級者さんに向けて、この新弾で特に注目しておきたい5枚のカードを、その理由と一緒に詳しくご紹介します。

カードの「注目度」は、単にパワーが高いとか、コストが低いといった情報だけではなく、そのカードがデッキの中でどんな役割を果たせるか、他のカードと組み合わせるとどうなるか、そしてゲーム全体の流れや相手の戦略にどう影響するかという、色々な視点から考えることが大切です。今回は、そんな多角的な視点で選んだ注目の5枚を見ていきましょう。

新しいカードを見て「これは強い！」と感じるには、いくつかのポイントがあります。

• コストに対してどれだけ「お得」か？ カードを出すために必要な「ドン!!」というコストに対して、そのカードが持つパワーや効果がどれだけ優れているかという視点です。例えば、少ないコストで相手の強力なカードを除去できたり、たくさんのカードを手札に加えたりできるカードは注目です。
• ゲームの状況をどれだけ変えられるか？ 1枚のカードを出すだけで、それまで不利だった状況をひっくり返したり、一気に相手を追い詰めたりできるような強力な効果を持つカードです。相手の盤面（キャラクターが出ている場所）をまとめてKOしたり、手札を大きく増やしたり、ライフを回復したりといった効果がこれにあたります。
• 他のカードと組み合わせるとどうなるか？ 特定の「特徴」を持っていたり、特定の名前のカードと組み合わせることで、単体で使うよりもはるかに強力な効果を発揮するカードは、そのデッキの柱になる可能性があります。これを「シナジーが強い」と言います。
• 新しい戦略を生み出すか、既存の戦略を強化するか？ 今までになかったユニークな効果で新しいデッキタイプ（「アーキタイプ」と呼びます）を生み出したり、すでに強いデッキをさらに強くしたりするカードは、今後の環境の中心になるかもしれません。

これらの視点を持ちながら、OP12「師弟の絆」のカードリストを眺めてみると、きっと面白い発見があるはずです。今回は、特にゲームへの影響が大きそうだと考えられる5枚をピックアップしました。

それでは、ブースターパック「師弟の絆【OP-12】」から、私が特に注目する5枚のカードを詳しく見ていきましょう。これらのカードは、新しいデッキの可能性を秘めていたり、既存の戦略に新しい選択肢を与えたりする力を持っていると考えられます。

注目理由

このリーダーは、まず「ルール上、自分はコスト5以上のカードをデッキに入れることができない」という、デッキ構築のルール自体に変更を加えるユニークな能力を持っています。これは、デッキを組む際に50枚すべてをコスト4以下のカードで構成する必要がある、という非常に大きな制約になります。

しかし、その制約と引き換えに、リーダー効果として【起動メイン】【ターン1回】で手札のイベントカード2枚を「公開する」だけで、自分のパワー4000以下のキャラクター1体のパワーをそのターン中+2000できます。イベントを「使う」のではなく「見せる」だけなので、手札のイベントを失わずにキャラクターを強化できるのがポイントです。これは、特に低コストで数の多いキャラクターにドン!!を付与する代わりに、手札のイベントをコストとしてパワーを上げられるという、効率の良いドン!!運用につながります。

赤という色には、もともと低コストの強力なキャラクターが多く、それらのパワーをまとめて強化する戦略が得意です。このレイリーは、その赤の得意な戦術をさらに尖らせ、「低コストカードとイベントカードを最大限に活用する」という全く新しいデッキタイプを生み出す可能性を秘めています。パワー4000以下のキャラクターは序盤から中盤にかけての主戦力となることが多く、それらをイベントを「見せる」だけで+2000強化できるのは、アタックを通しやすくしたり、相手に多くのカウンターを使わせたりするのに非常に効果的です。

禁止改訂により特定の高コストカード（例えばゲッコー・モリアなど）のパワーが調整された環境において、コスト5以上のカードをデッキに入れられないというデメリットが、逆に低コスト帯のカードパワーとレイリーの強化効果で補えるかが注目のポイントです。

注目理由

このリーダーの最大の特徴は、【ドン!!×3】という条件を満たした状態で【起動メイン】効果を使うと、相手のキャラクターとバトルした後に自身をアクティブにできる点です。アクティブになったリーダーは、そのターン中にもう一度行動できます。つまり、相手のキャラクターを攻撃してアクティブになり、その後相手のリーダーや別のレストのキャラクターに再度アタックできる、「多段攻撃」を可能にするリーダーです。

ただし、この効果を使ったゾロは、そのターン中、相手の元々のコスト7以下のキャラクターにはアタックできなくなります。これは、強力なキャラクターを除去した後に、残った小型～中型のキャラクターやリーダーに追撃するという使い方を想定していると考えられます。

緑はもともと相手のキャラクターをレスト（横向き）にするのが得意な色です。例えば、「光月日和」や「イヌアラシ」といったカードと組み合わせることで、相手のキャラクターをレストにしておき、ゾロリーダーで攻撃→アクティブ→レストのキャラクターに再度攻撃、という動きができ、盤面を効率よく除去しつつ相手リーダーにもプレッシャーをかけることが期待できます。

【ドン!!×3】の条件は、ドン!!カードをリーダーに3枚付与することで達成されます。これにより、リーダーのパワーは最低でも5000+3000=8000となり、相手のキャラクターと互角以上のパワーでバトルしやすくなります。

赤のゾロリーダー（OP01-001 L）はドン!!をコストにキャラクター全体を強化するアグレッシブなリーダーでしたが、この緑のゾロリーダーはリーダー自身の多段攻撃に焦点を当てた、また異なるアグレッシブなリーダーと言えます。禁止改訂後、特定の除去カードが使えなくなったことで、リーダー自身の攻撃性能が重要になる場面も増えるかもしれません。

注目理由

このリーダーは、特定のカード名を持つキャラクター、「トラファルガー・ロー」に特化したサポート能力を持つユニークなリーダーです。

まず、【ターン1回】、自分の場の「トラファルガー・ロー」という名前のキャラクターがKOされる場合、代わりに自身のライフの上からカードを1枚手札に加えることで、そのKOを防ぐことができます。ライフをコストにすることで、「トラファルガー・ロー」という名前のキャラクターを相手の除去や戦闘から守ることができる、非常に強力な防御能力です。

さらに、【起動メイン】【ターン1回】でドン!!を1枚ドン!!デッキに戻すことで、そのターン中に手札からプレイするコスト4以上の「トラファルガー・ロー」のコストを2少なくできます。これは、強力な高コストのローをより少ないドン!!で場に出せる、展開補助の能力です。

紫と黄色の組み合わせである点も特徴的です。紫はドン!!操作や高コストカードの展開が得意で、黄色はライフ操作やトリガー効果に優れています。ロシナンテの能力は、この色の特徴を活かした「トラファルガー・ロー」を軸にした戦略を可能にします。特に、KO耐性を持つことで相手の強力な除去や攻撃から「トラファルガー・ロー」を守りつつ、コスト軽減で手札から次々と展開していく、粘り強くコンボ性の高いデッキが考えられます。

過去に環境トップだった赤紫ローリーダー（ST10-001 L）は禁止されましたが、このロシナンテリーダーは「トラファルガー・ロー」という特定のキャラクターに焦点を当てることで、また違った形の強力なデッキを生み出すかもしれません。様々な効果を持つ「トラファルガー・ロー」という名前のキャラクターカード（OP10-119,OP10-118,OP10-106など）が存在するため、どの「トラファルガー・ロー」を中心にするかでデッキのタイプも変わりそうです。

注目理由

コスト8、パワー8000、そして【ブロッカー】を持つ、終盤の守りの要となるキャラクターです。しかし、このカードが特に注目されるのは、その【登場時】効果です。

場に出た時に、自分のコストエリアにあるドン!!カードを最大4枚までアクティブにできます。ドン!!は通常、自分のターン開始時のリフレッシュフェイズにすべてアクティブになりますが、このカードを使えばメインフェイズ中に、既に使ったドン!!を最大4枚も回復させることができます。これにより、8コストを支払ってミホークを出した後でも、アクティブになった4ドン!!を使ってさらにカードをプレイしたり、既存のキャラクターにドン!!を付与して攻撃力を上げたり、カウンターイベント用のドン!!を確保したりと、様々な追加のアクションが可能になります。

特に、ブロッカーとして相手の攻撃を止めつつ、アクティブになったドン!!で反撃の準備や追加の防御手段を確保できる点が強力です。緑のデッキは相手のキャラクターをレストにするのが得意なので、ミホークでドン!!をアクティブにした後、レストにした相手キャラにアタックしたり、別のキャラクターを出して攻めたりといった展開も考えられます。

ただし、この効果を使ったターン中、元々のコスト7以上のキャラクターを登場できなくなるというデメリットがあります。これは、ミホークの登場によって得たドン!!を使って、さらに強力なフィニッシャー（コスト7以上）を立て続けに出す、といった過度な展開を防ぐための制約でしょう。それでも、8コストでブロッカーと4ドン!!アクティブというリソース回復を両立できるのは、ゲーム後半において非常に強力な効果と言えます。禁止されたゲッコー・モリア（OP06-086）が盤面を展開するカードだったのに対し、このミホークはリソースを回復するカードとして、異なる形でゲームに影響を与えそうです。パッケージを飾るカードという点でも注目度は高いでしょう。

注目理由

コスト5、パワー6000、カウンター1000、そして【ブロッカー】を持つ、標準的なスペックに加えて強力な【登場時】効果を持つキャラクターです。

【登場時】効果は、「自分のレストのカードが8枚以上ある場合」という条件を満たしていれば発動できます。この条件は、自分の場のキャラクターやリーダー、あるいは既にレストにしたドン!!カードの合計が8枚以上であれば達成されます。特に緑のデッキは、リーダーの攻撃やキャラクターの効果で多くのカードをレストにする展開になりやすいので、この条件を満たしやすいと考えられます。

条件を満たした場合、カードを2枚引き、手札を1枚捨てるという効果（いわゆる「ルーティング」や「手札の質の向上」）と、自分のドン!!を1枚アクティブにする効果が発動します。5コストでブロッカーを出しつつ、手札を入れ替えてデッキのキーカードを探しに行けたり、不要なカードをトラッシュに送ったりできます。さらに、使ったドン!!を1枚回復できるため、実質的なコスト軽減にもつながります。

特に、攻撃に多くのドン!!を使い、盤面がレスト状態になっている状況でこのカードを出すことで、防御的な【ブロッカー】を立てつつ、手札とドン!!を補充して次のターンの準備ができるのが強力です。緑のゾロリーダー（OP12-020 L）のように、リーダー自身がレストになる動きをするデッキとは特に相性が良いかもしれません。コスト5という出しやすいコスト帯であることも、この効果を狙いやすくしています。

• シルバーズ・レイリー（リーダー）は、既存のデッキ構築の概念を覆し、「コスト4以下+イベント軸」という全く新しいアグロ/ミッドレンジ戦略を生み出すかもしれません。低コスト帯のカードプール全体に注目が集まりそうです。
• ロロノア・ゾロ（リーダー）は、ドン!!を集中させてリーダー自身が複数回攻撃するという、これまでの緑リーダーとは異なるアグレッシブなアプローチをもたらします。相手のキャラクターをレストにする緑の強みと組み合わせることで、盤面処理とライフへの攻撃を同時に行う強力なデッキになるかもしれません。
• ドンキホーテ・ロシナンテ（リーダー）は、「トラファルガー・ロー」という特定のキャラクターを軸にした、保護と展開に長けたデッキタイプを確立する可能性があります。どの「トラファルガー・ロー」カードを組み合わせるかで、コントロール寄りのデッキになったり、コンボデッキになったりするかもしれません。
• ジュラキュール・ミホーク（キャラクター）は、ブロッカーとしての防御性能に加え、登場時にドン!!を回復させるというユニークな効果で、緑系のデッキに新たな切り返し手段をもたらします。8コストと重めですが、そのリソース回復能力は終盤のゲーム展開に大きく影響するでしょう。
• ジュエリー・ボニー（キャラクター）は、緑系のデッキが自然と満たしやすい条件で手札とドン!!を補充できるブロッカーとして、デッキの安定性と継続力を高める可能性があります。特に、攻撃的に動いてレスト状態が多くなりがちなデッキにとって、攻めの後の守りを固めつつリソースを回復できる貴重なカードになりそうです。

これらのカードが、既存の【緑黄ヤマト】、【黄エネル】、【青紫ルフィ】といった環境デッキに採用されたり、あるいはこれらのカードを中心とした新たなデッキが登場したりすることで、2025年4月の禁止改訂後のメタゲームはさらに変化していくと考えられます。

今回は、「ブースターパック 師弟の絆【OP-12】」から特に注目しておきたい5枚のカードをピックアップしてご紹介しました。

• シルバーズ・レイリー（リーダー）：低コスト・イベント軸の新戦略
• ロロノア・ゾロ（リーダー）：ドン!!×3での多段攻撃
• ドンキホーテ・ロシナンテ（リーダー）：「トラファルガー・ロー」保護＆展開補助
• ジュラキュール・ミホーク（キャラクター）：ブロッカー＆ドン!!回復
• ジュエリー・ボニー（キャラクター）：レスト条件での手札・ドン!!回復ブロッカー

これらのカードは、単体での強さだけでなく、他のカードとの組み合わせや、ゲーム状況によってその真価を発揮します。新しいデッキを考える時、相手のデッキを対策する時、あるいは対戦中に相手が出してきた時に、「このカードはどんな可能性があるんだろう？」と考えるヒントになれば嬉しいです。

新しいカードの登場は、デッキ構築やプレイングの幅を広げ、ゲームをより面白くしてくれます。ぜひ、これらの注目カードを使って、自分だけの強力なデッキを組んでみてください！今後の環境の変化にも注目していきましょう。